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素材の話し 生地編

昨日までワークマンで揃えるトレッキングウェアという記事を続けてアップしてきました。
テントやタープを紹介する際にもほぼ必ず素材に関しても触れていると思います。
そんな中で当たり前のように語ってきていましたが、構成する生地の素材によってその道具の性能は大きく変わります。
生地の特性を知らずに道具を評価することは出来ません。
そんなわけで各素材の特性を紹介してみようと思います。
ただし自分は専門家ではないので、間違えて解釈・記憶していることもあり得ますので、過ちに気がつかれた方はご指摘いただければ助かります。
・コットン=もめん
綿花から採れたワタを紡いで織られた、天然繊維。
吸水性・通気性に優れた特性を持ち、肌触りが柔らかいのも特徴です。
その上、生産コストが安価!
耐熱性が多少あるので、少しくらいの熱では溶けたりしにくいのも優れた特性。
一方で吸水性には優れていても速乾性は劣ります。
通気性が良いということは水も通すという事なので、防水性も劣ります。
化学繊維に比べると重いのも欠点です。
雨風を遮るという観点からはテント・タープには不向きなので、主流からは外れています。
しかし耐熱性に優れているので焚き火などに強い、テント・タープとして現在も強い支持を得ています。

衣料品としては、大量の汗をかくようなスポーツなどには不向き。
あまり汗をかかない普段の日常着や、難燃性を生かした焚き火ウェアなどに向いています。

・T/C(テクニカルコットン)
綿混紡、ポリコットンなど色々な呼び方があります。
要はコットン(綿)と化繊(一般的にはポリエステル)との混紡生地です。

コットンの優れた特性を生かしつつ、欠点を化繊で補おうという発想ですね。
ただ完全に欠点を補えるわけでも無く、許容範囲に抑えているといった感じでしょうか。
ノルディスク社のコットン100%のスーと、T/Cのアルフェイム両方を使っていた自分には、耐水性も軽さも極端な差は無いように思えます。

でもメーカー側の都合か、消費者がT/Cの方が優れているという思い込みが強いのか、製品に採用されるのはT/C優勢のようです。

衣料品としてはシエラデザインのマウンテンパーカーなどが有名です。

雨が降ってもコットンが吸水・膨張して目が詰まることにより防水性を高めると喧伝されていますが、ハッキリと断言できます、Gore-Texの足元にも及びません!
価格はどちらも高額なのに・・・
100%コットンよりは幾分マシという程度。
なんというかイメージ先行で、あまり有効性を感じません。

・ウール
羊毛を紡いで織られた、天然繊維。
羊毛繊維は縮れて絡み合って空気を多く止めるので保温性が高い。
保温性というと暖かさばかりを想像しがちですが、冷気も留めるすなわち保冷効果も意外とある。
通気性のよい編み方をすると夏涼しくて、目の詰まった編み方をすると冬暖かいって感じです。
更に水を弾く性質ながら水分を吸収するので、汗をかいても湿った感じがしないのです。
更に防臭効果に優れてもいます。
衣服の素材としては非常に魅力的!
しかし一度でも洗濯すると、摩擦によって繊維がほぐれてきてしまいます。
結果的に毛玉ができたり、繊維が痩せてきます。
また肌触りがチクチクしやすいのもデメリットかと思います。
キャンプでは保温性=断熱効果が高いことからラグやブランケットなどによく使われます。

有名なのはペンドルトンなどでしょうか。

衣類ではセーターなどによく使われますが、アウトドア衣類では汗をよく吸い防臭効果に優れていることから肌着や靴下でも人気があります。
合成繊維
科学的に合成された繊維で生産料の多いのが「ポリエステル」「アクリル」「ナイロン」で、日本だとこの3つだけで生産量の約9割を占めるそうです。
ポリエステルはコットン、アクリルはウール、ナイロンはシルクに似た素材だそうです。
それぞれをもう少し詳しく説明してみます。

・ポリエステル
エステル結合させた重合体(重合体=ポリという事です)
文系の自分には何が何だかさっぱりわかりません(苦笑
まぁ石油から作られる合成体だと思っておけば良いでしょう。
繊維だけでなくいわゆるポリ袋やペットボトルなんかも、ポリエステルから作られるそうです。
繊維としてはコットン=もめんと似た特性ですが、速乾性があり軽いのが大きく異なります。
キャンプではテントのフライ生地やタープに多く使われています。

通気性が良く乾きやすく軽く強いのですが、実は単独では雨を通してしまうのが欠点です。
なので後述するポリウレタンコーティングすることにより防水性を高めます。アウトドアウェアにも上記のような特性から非常に幅広く使われています。

特に速乾性に優れているのが強みです。
通気性が良いので汗抜けは良いが防風性・防水性には劣る、この辺りはメリットデメリットが表裏一体ですね。

後述するフリースも実はポリエステルの一種。

・アクリル繊維
柔らかくて保温性が高い特性で、かさ高があります。
先述したようにウールに似た特性ですね。
同様に毛玉が出来やすいという欠点も一緒です。
キャンプではウール同様、ラグによく使われます。

アクリルは染色性も良いので、発色が綺麗なのですね。
アウトドア衣料では「強くて毛玉ができにくい」ポリエステルの方が多く採用されているようです。
染色性の良さや保温性重視の場合にはアクリル繊維が使われることも稀にありますが、少数派だと思います。

・ナイロン
天然繊維では絹に似ていると評されますが、ポリエステルとも特性は似ています。
ポリエステルよりも軽く摩擦に強く吸水性に優れます。
キャンプ道具にはポリエステルの方が素材として多く使われていますが、一部の高級テントではシルナイロンという素材が使われています。
シルナイロンは別途後述します。
アウトド衣料では、吸水性の良さが災いしてベースレイヤーの素材には敬遠されていますが、アウターレイヤーではよく使われています。
・ポリウレタン(PU)
ウレタン樹脂・ウレタンゴムとも呼ぶ。
ウレタン結合を有する重合体の総称
先述したポリエステルと同じく「ポリ」とつくので、混同している人も見受けられますが別物です。
ぶっちゃけ自分は混同していました(笑
ポリ=ポリマー=重合体という事のようです。
重合体ってのは複数のモノマー(単量体)が結合した物質で・・・ って、よくわからん!
とにかくポリエステルとは別物です。
(ただし組み合わせてよく使われます)
繊維としてはゴムと代替出来るほどよく伸びる特性を持っていて6倍の弾性を持つ唯一の合成繊維。
他の繊維に巻き付けたり覆ったりして複合的に使うことが多い。
その優れた弾性特性を生かして、非常に多くの工業製品の素材として用いられている。
防水コーティング剤としてもポリウレタン(PU)コーティングがポリエステルなどの裏面に施される。
繊維同様に弾性があるのが特徴。
どちらも水分からひきおこされる加水分解による劣化が最大の欠点でしょう。
この加水分解は使用回数とは関係無く、合成された直後から進んでいく。
高温下では特に即進化される。
キャンプではテント・タープに防水コーティング剤としてとても広く使われている。

むしろコットン系以外の素材には、防水処理としてほとんどポリウレタンコーティングがなされていると思って良いくらい。
それ以外だと後述するシルナイロンがごく少数使われています。
先述したように加水分解というデメリットがあるのだが、生産性の良さやコストや加工のしやすなどがメリット。
加水分解が重度に進むとベタついたり剥がれて異臭までします。
アウトドア向け衣料品にもポリウレタン繊維も広く使われていて、動きやすさや体にピッタリ沿わせるためのストレッチ素材には必ずポリウレタンが含まれると思っていいです。

また安価なレインウェアーもポリウレタンコーティング、もしくはウレタン膜を採用したものばかりです。
これらの製品は必ず加水分解をおこします。
伸びやすさや防水性はアウトドアでは必須の要素なので、加水分解は宿命と諦めるしかないのが現状です。
でもお気に入りの道具が劣化して臭くなるのは悲しいのが本音。
本当にどうにかならないのかな〜

・シルナイロン
ナイロンにシリコンをコーティングし染み込ませた素材。
先述した時はナイロンの吸水性はアウトドウェアにおいてはネガティブに紹介しましたが、加工においてはコーティングが染み込むので好都合。
剥がれたり分離する事が無いのです!
なのでシルナイロンはPUのように劣化する事が無く、耐久性が高いとよく紹介されます。
元々軽さや強さに秀でたナイロンが、シリコンによって防水性も付加されたのだからとても優秀な素材でテントのフライシートに使うには最適と思えます。

しかし欠点もあります。
まずシルナイロンは高額な素材ですから、安価な製品には簡単に使えません。
そしてとても熱で溶けやすい素材なので、万が一にテントが燃えた場合は溶けたシルナイロンが上から降ってくるのです!
それでアメリカでは火災法でテントにシルナイロンを使うことを禁止していたくらいです。
(現在は耐熱性のあるシルナイロンも登場しているので、全面禁止ではなくなりました)
さらにシルナイロンはシリコンのおかげで表面がとてもツルツルしていて、シームテープが貼れないのです。
なので縫い目に、特別な目止め剤を塗布するのですがそれがコスト増に繋がります。
更に結露もしやすい素材です。
やはりメリットだらけの素材はなかなか無いのですね・・・

・塩化ビニール
略してエンビ、ソフビ、PVCやターポリンとも呼びます。
合成樹脂の一種で、そのままでは硬くて脆いのですが、可塑剤と安定剤を加えることにより柔らかく加工できるのです。
ベース素材のナイロンにコーティングするとPVC、ポリエステルに貼り付けるのがターポリンです。
糸を編むのではなく、樹脂を固めて製造するわけです。
完全な防水性を持ちますが、透湿性は皆無な特性です。
完全防水の特性を活かすためには縫う事ができないので、圧着・接着するしかないので加工性には難があります。
また他の素材よりも厚く重いという欠点もあります。
キャンプでは完全防水の特性を生かしてフロアーシートに使われる事が多いです。
アウトドア衣料品としては完全防水の特性を生かしてレインウェアーに使われる事があります。
しかし先述したように透湿性は無いので、外からの雨は防げても内側からの蒸れも閉じ込めてしまいます。
結局濡れてしまうので、行動着としては難しいのが実情。

・Gore-Tex
これは生地の名称というよりも製品名ですね。
高い防水性と透湿性を共存させた素材。
ゴアテックスの登場以後、似たような効果をもつ素材は色々と登場しましたが、特許の絡みなのかほとんどが基本はポリウレタンの派生品です。
それに対しゴアテックスは劣化しにくいフッ素系樹脂(PTTE)ベースなので加水分解せずに耐久性があるのです。
欠点は、本来のゴアテックスは伸びないので、動きを重視するものには使いづらい。
キャンプではやはりテントのフライに使うと良いと思うでしょう。
高い防水性と透湿性を兼ね備えているのだから、フライシートのみで雨を防いで内部結露しないからインナー要らずのシングルウォールで済みます。
軽量化を優先する山岳テントでこれは理想的!
みんなの憧れでした!
って何故か「でした」と過去形・・・
素材の製造元Gore-Tex社がテント用の素材提供をやめてしまったからです。
山岳用テントの最高峰と自分は憧れていたんですけどね・・・
アウトドア衣料品としては相変わらず最高峰のままです

常に進化を続けてより高い防水性に透湿性を追求しながらも、伸縮性を併せ持ったゴアテックスも登場しています。
有名な分、いわばブランド料金として割高なのは否めません。
しかしながら一番最初に登場した=多くの特許を抑えていて、一番長く研究していて、稼いだ潤沢な資金で更に研究できる。
こう考えたら一番優秀な防水透湿素材は今でもゴアテックスなんじゃないかと自分のような素人は思うわけです。

・ヒートテック
これも製品名です。
ユニクロで皆さんご存知のアンダーウェアに使われている生地の商品名です。
ユニクロと東レが共同で開発している製品です。

人体が発する汗が繊維に触れると、細かい水の粒子と繊維が擦れて熱を発するのです。
これを「吸湿発熱」と呼びます。
とにかく温めるためには汗が必要ですし、その為には汗を乾燥させたら効果が無いと考えたのでしょう。
ヒートテックはレーヨンという素材が多く含まれています。
レーヨンは人工的な絹を目指して作られた化学繊維ですが、吸水・保湿性が高いという特性があります。
要するに発熱に必要な汗を貯め込もうという発想なのでしょう。
なので、ヒートテックは速乾性は皆無という事です。
そうなると行動中は常に汗がまとわりつく事になるわけです。
しかし汗をかきまくるからといって、汗の量に比例して発熱するわけではありません。
一定量を超えた汗は普通に汗冷えして、逆に体温を奪って行くのです。
こうした理由により、ヒートテックは行動着には不向きなのです。
室内などあまり汗をかかない状況下では効果的なのですが、登山には向きません。
と、ベースレイヤー編でも同様のことを書いているのですが、蛇足的にここではある製品を紹介しておきたいのです。
吸湿発熱の元祖はヒートテックと思いがちですが、実は違います。
ヒートテックが世に出たのは2003年ですが、自分は2001年のスケート競技の国体に仕事で出向いていました。
その時にミズノの出張販売店で、ある生地に出会ったのです。
それがBREATH THERMO(ブレスサーモ)、ミズノと東洋紡が1994年に共同開発した吸湿発熱の本当のパイオニアです。

デモンストレーションでこの生地を身体に巻いてみたらめっぽう暖かかった。
気に入ったので上下で購入しましたが、かなり割り引いてくれても1万円近かったと記憶しています。
でもその金額に見合うだけの暖かさが有ったので、知人に紹介すると皆大満足していました。
その2年後にヒートテックが発売され話題になった時は驚きました。
だって原理は全く同じなんですから。
ただし暖かさは確実にブレスサーモの方が上です!
そして大切なのは幾分か速乾性を有しているので、ヒートテックほどは汗冷えもしないのです。
登山で使えるほどの速乾性は正直ありません。
でもスキーなどではハッキリ実感できるくらいの差はあります。
自分はブレスサーモと出会って20年近く経ちますが、買い替えながら今でも使い続けています。
ヒートテックの陰に隠れて本当に優秀な製品が知られていないのが悔しいので、あえてここで紹介させてもらいました。

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・フリース
ポリエチレンから作られた柔らかい起毛仕上げの線維素材です。
保温性・速乾性に優れ、軽量で安価。
登山用ミドルレイヤーに最適な素材の1つです。
モールデンミルズ社が元祖で1979年に発表したそうで、同社のPOLARTECが有名です。

でも現在は他社からも似たような素材がたくさん出ていて、メーカー間で極端な差はもう無くなったように思えていました。
しかしフリース素材を格子状に配する事により、その隙間に空気層を作ってより暖かくすると同時に汗を溜めないようにするなんて生地が出たりして、まだ改善の余地を感じさせます。

・ポリプロピレン
ポリエステルの一種ですが、ほとんど水分を含まないという特性を持ちます。
数十年前に起こった海難事故の話しですが、数十日間漂流して生存が絶望視されていたが数人のクルーは助かったという事故がありました。
その際に従来からの綿の肌着を着て助かったクルーはいなかったそうです。
助かったクルーは全員ポリプロピレンのアンダーウェアーを着ていたそうです。
肌着の素材1つで生死を分ける事もあるのです。
この話しを、当時出入りしていたヨット系アウトドアショップのスタッフに聞いて以来、自分はポリプロピレンの信者です。

ただポリプロピレンは肌触りが悪いのと、匂いが吸着しやすいので、最近のアウトドアウェアでは敬遠されがちでした。
しかしミレーがポリプロピレンを用いたメッシュ構造のアンダーウェアを開発して大ヒット商品となりました。

このように素材の特性と合った構造を取り入れれば、まだまだキャンプ道具やアウトドウェアーは発展すると思います。
素材のお話し、如何でしたでしょうか?
あまりカタログスペックばかりに囚われるのは如何なものかと自分は思っています。
例えば安価な中華製の対水圧3000mmの生地を使ったテントと、信頼あるブランドの対水圧2000mmのテントならば、実際に使ってみたら後者の方が過ごしやすい事が多いと思います。
生地はその通りのスペックだとしてもシーム処理や通気性を考慮した作りなど、数値にしづらい工夫がなされているかどうかで過ごしやすさは大きく変わるからです。
でもだからと言ってコットン素材のテントがシルナイロン素材のテントに防水性で勝ることはあり得ないのです。
一方で耐水性ではなく結露に関して言えばコットンの方がシルナイロンよりも優秀です。
どちらも長期間経過しても劣化しづらいだろうことも想像出来ます。
素材の特性を知っていれば、その製品がどんな使用環境を想定してどんな特徴の製品なのか想像することができます。
実際に使わないとわからない事も多くありますが、使わなくとも予想できる事もあるのです。
素材を知ればカタログを見ているだけで楽しめることもあるのです。
そして後半にお届けしたように枯れた技術のように思われた素材も工夫次第で凄い素材に生まれ変わったりもします。
皆さんも素材に興味が湧いてきませんか?
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