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熊・猪の危険性について考える

先日は倒木の危険について考察してみましたが、今日はキャンプ場での熊・猪の危険性について考えてみようと思います。
猿や鹿なども、襲ってきたらかなり危険ですが生命の危機に関わる獣となると、日本国内だと熊か猪が対象になると思います。

(毒を持つ蛇やスズメバチも生死に関わりますが、範囲を広げ過ぎると話が長くなるのでそれらはまた別の機会にさせて下さい、毒蛇に関しては→リンク

キャンプは自然の中でのレクリエーションです。
そのため熊・猪の生息圏に接することもあります。
特に近年は山野の開発が進み熊の餌となる小動物等が減少しているために、熊が人間の生活圏にも行動範囲を広げる傾向にあります。
あるいは山にも餌はあるのに、野生の猪に餌を与えてしまったために市街地にも出没する地域もあります。
神戸市では「コンビニに猪が買い物に来る」と揶揄されるほど、市街地に出没していました→リンク
(神戸市街での猪被害は2014年がピークで、現在はほとんどないようです。)市街地にも現れるくらいですから、キャンプ場も十分出没する可能性があります。
自分はキャンプ中にそうした熊やイノシシに遭遇した事はありませんが、観光地として有名な神奈川県の箱根芦ノ湖にある芦ノ湖キャンプ村で「昨日もイノシシが目撃されているので注意して下さい」と受付で言われた事があります。→リンク

子供連れで家族が多く訪れるような上田市市民の森公園内にあるキャンプ場でも、自分が滞在している当日に熊の目撃情報があったので気をつけるように言われた事もあります。リンク
他にも長野県辰野町のキャンプ場で熊の目撃情報があったという看板も見ています。
ある程度整備されたキャンプ場でも、決して危険性が皆無とは言えないのが現実です。
そうした熊やイノシシの被害に遭わないためにはどうしたら良いのでしょうか?
余暇としてキャンプを楽しもうと考える我々が先ず考えるべきは撃退などではなく、最初から遭遇しない事だと思うんです。
野生動物と遭遇しないようにキャンプを辞めましょうという話しではありません。
普通、野生動物はとても警戒心が高く臆病なので、人間を避けるものなのです。
そこそこの大きさ(=膂力)を有し、罠や銃火器などの道具を得ると高い殺傷能力を有する人類は、熊や猪にとっても十分脅威なんです。
ですから野生獣としてもリスク回避のためには出来れば人類の生活圏には足を踏み入れたくない、だけど美味しい餌が簡単に手に入るからリスクを冒してでも人間が居るキャンプ場等を徘徊するのです。その餌の供給を止めるのが先ず最優先です。
ここで言う餌とはもちろん我々キャンパーの食材や食べ残しです。
イノシシが出没していた時の芦ノ湖キャンプ村でもとにかく食べ物を外に放置しないようにと強く注意されました。野生動物は嗅覚に優れているので、匂いが漏れないように口を縛ったビニール袋等に入れるのはもちろん、出来れば車の中に閉まってしまうのが一番だと思います。

それでも近くに出没してきた場合は、向こうから逃げてもらうように仕向けましょう。
先に述べたようにイノシシも熊も本来は人間を避けます。
すなわち人の声や物音がすれば、通常は向こうから逃げ出してくれます。
神戸市の猪のように極度に人間慣れしてしまうと音に対しても鈍感になってしまいますが、ほとんどの地域の猪も熊も人間が出す音には敏感です。
なので熊鈴やラジオなどは有効な対策です。
ネット上では「熊鈴は無効どころか人間=餌の存在を知らせるからむしろ危険だ!」などと言う意見も散見されますが、それは人間を食べた所謂人喰い熊の場合です。
不幸な出会い頭で人を襲った熊でもそのまま人を食べる事は稀です。
そして一度でも人を食べた熊は、地元猟友会が殺処分するのでいつまでも放置されている事は日本ではあり得ません。
猟友会が殺処分するまでの間はその出没地域のキャンプ場は通常は閉鎖されますし、周辺地域ではネット等でも注意喚起されるので事前に調べればわかります。
そんな危険な地域だとわかっているなら、熊鈴をどうこう考えるよりもキャンプは行うべきではありません。
極度に人間慣れした神戸市のイノシシだって、音が鳴っているからと人間に寄ってくる事はありません。
(食べ物の匂いがすると寄ってくる可能性はあるようです)
人間慣れしていると効果が薄い場合はあっても、害は無いので人喰い熊が出没している特殊な地域・時期以外は熊鈴は有った方が良いと考えるべきです。
熊鈴は100均で購入できるようなものでも構いません。

ただ登山などでも兼用したいと思うなら、消音機能が備わっているものの方が電車移動など人が大勢いるような時でも気兼ねなく済むのでお勧めです。

東京ベルTB-K1
ただ先ほどから述べているように人馴れしてしまっている個体もいますし、風や川などで音が届かない場合もあるようです。
そうやって不幸にも熊やイノシシに遭遇してしまった場合には襲ってこない限りは無駄に刺激しないこと!
イノシシにしろ熊にしろ、彼らが本気で追ってきたら人間が逃げきるのは至難の業です。
慌てて行動しても意味はありません。
また、急に逃げ出すと本能的に追って来るので、とにかく焦らず落ち着いて行動しましょう。
落ち着いて背を向けずにゆっくりと後退りしながら立ち去るようにしましょう。
もし傘を持っていたら、傘を広げて隠れるのも1つの方法です。
イノシシでしたら木に登る事は出来ないので高い所に逃げるのが有効な逃亡ルートです。
ただし熊の場合は木登りも得意なので木に登ると逃げ場がなくり悪手となります。
ちなみに熊に死んだふりはただの迷信です。
ただし「ばったり出くわしたら、地面に伏せて首をガードし、1撃目を食らわないのが大事」と言う専門家の意見もあります。

熊が人を襲う時
そう言う意味ではうつ伏せになって死んだふりなら有効かもしれません。
この著書によると「ステッキやスコップ、ピッケルなどを振り回すと、クマは怖がるらしい。クマはクマが怖い。ピッケルなどキラキラ光るものが、クマの爪にみえる」とも書かれています。
源流遡行や渓流釣りで何度もツキノワグマを目撃した事のある知人に聞いたのは
「ヤツラは意外と目が悪いから、人間に気がつかない事が多いんだよ」
「気がつけば向こうが逃げてくれるから、ワーとか叫びながら、小石を投げつけて気付かせれば良いんだよ」と言っていました。
この知人も「背中を向けて逃げ出すと、襲われるから絶対に背中は見せちゃダメ!」とも言ってました。
しかし宮城県が公開している熊への対策方には→リンク大声をあげたり,石や棒等を投げつけることは,クマをいたずらに興奮させるだけです。まず,落ち着いてください」とあります。
えっ!? どっちなの? って思いますよね。
おそらくどちらも正しいんですよ。
先に紹介した著者や私の知人も、何度も熊と遭遇している超上級者です。
こうした人達は、熊を冷静に観察できて、興奮している危険な個体なのか?おとなしい個体なのかの判断が的確なんだと思うのです。
熊に遭遇したことの無い自分のような素人は下手な刺激をしないように、そっと逃げることに専念した方が良いと思うんですよね。
ちなみに岡山市のイノシシに遭遇した場合のマニュアルを見ると「棒などで追い立てたり威嚇は絶対しないように!反撃する限りイノシシはいつまでも攻撃してきます」なんて記述があります。→リンクやっぱり威嚇はしない方が良さそうですね。

しかしうまく逃げきれずに、襲って来た時は「熊よけスプレー」で対抗するというのが、一般的なイメージかと思います。
熊よけスプレーの良い点は
・変に威嚇する大きな予備動作をしなくて済む。
・非力な女性や子供でも効力を発揮する。
という事だと思います。

こうした熊よけスプレーも、何でも良いというわけではありません。
先ずとにかく実績のある安心した製品でないと、いざという時に噴射されないなんて悲劇に繋がりかねません。
アマゾンのレビューとかを見ると、そういう粗悪品も散見されます。
公的機関での実採用例などが1つの目安かな?と思います。
更に誤って射出されないよう、でも必要な時は素早く使えるような安全装置が付いた信頼性のある製品でないとなりません。
それと噴射された液から自分自身を守るというために油性ではなく水性の薬品を採用している製品の方が良いと自分は考えています。
誤って熊よけスプレーがほんの少しかかっただけでも大変な苦労をされた方のブログが参考になりました→リンク失明するかもしれない程に強力で、水では洗い流せない油性の液剤が少しでもかかったら地獄の苦しみのようです。
熊よけスプレーを購入しようと思う方は是非ご一読をお勧めします。
まず滅多に遭遇する事のない熊よりも、知識の無いまま熊よけスプレーを持つことの方がよほど危険だと自分も思いました。

それでもやっぱり熊が出没するような地域でキャンプがしたいと思った時に熊よけスプレーは安心に繋がります。
そういう意味で自分も水性の熊よけスプレーは購入しました。
本州に生息するツキノワグマには水性で、北海道に生息するヒグマには油性という分け方をする人がいますが、ヒグマに対して水性が全く無力という事はないでしょう。
完全に熊を無力化する必要なんて無いのですから、ただ逃げてもらえれば良いだけと思えば水性でも十分に意味はあるんじゃないでしょうか?
もちろんイノシシにも効果は十分あるようです。重要なのはむしろ噴射距離じゃないかと思うんです。
どんなに強力な薬剤が入っていても、熊やイノシシの顔面にかからないと効果はありません。
鋭い爪や牙が届く至近距離よりは、数mの距離を空けて射出したいと思いませんか?
水性・油性に関係無く、噴射距離はスプレー管の中の圧縮ガスの容量に依存します。
要するに大きな缶の方がより遠くまで射出出来るのです。
更にいうと薬品も多く内包出来るので噴射時間も長くなり、目標に当て安くなります。
だけど大きな缶になると、携行するのに邪魔になり「ちょっとトイレ」なんて時につい面倒になって持ち歩かなくなる事が予想されます。
常に持ち歩かないと意味が無いので持ち歩きやすく、かつギリギリ大きな缶を選ばないとなりません。

以上の、1.信頼できる製品、2.水性、3.適度な大きさ、という条件の中で選んだのが下記の製品です。

PoliceMagnum熊撃退スプレー
現状、日本で自分が携行するならこれしか選択肢は無いと自分は思い購入しました。
ただくれぐれも、スプレーが有るからと油断しないようにして下さい。
先に挙げたリンクにも書かれていますが、この製品の噴射距離5mにまで熊が近付いて来ないとなりません。
その恐怖感に耐えなければならないわけです。
そして、これも先のリンクに書かれていますが、風が吹いたらこの噴射距離は更に短くなります。
何なら逆風の時はこの熊をも撃退する強力なスプレーが自分自身に戻ってくる可能性まであります。
理想は風上から射出するのが一番ですが、そのロケーションを緊急時に選べる訳もありません。
要するに熊よけスプレーが使えるシチュエーションはかなり限られているのです。
あるいは気づかずに出会い頭で熊よけスプレーを構える暇も無く、襲われた事例もあります。→リンクこうした実例を見ると、本当に熊よけスプレー意味が無いなぁ〜とも感じます。
野生動物が相手ですから、「絶対にこれで安全」なんて方法はありません。
その時々によってベストな対処法は変わります。
でも素人の我々がその全てに対処出来るわけがありません。
結局は運次第なのだろうと思います。

とは言え最初から全て運任せでは万が一の時の生存確率が下がりますから、いろんな場合を想定して少しでも安全を確保できるようにして欲しいと思い、この記事を書いてみました。
まぁそう言っている自分が落ち着いて対処できるか自信がありませんけどね。

皆さんが安全に楽しいキャンプを過ごされることを切に願っています。

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