汚れた物を手に持つ時、刃物や棘などの危険から手を守りたい時、火などの熱いものから手を守りたい時。
色々な状況で手を守れてその上とても安価な軍手は便利で手軽な手袋です。
先日、自分は小学生の飯盒炊爨に立ち会う機会がありました。
薪でお米を炊いてカレーライスを作るというよくあるド定番コースです。
本来自分は子供たちの手伝いをする立場ではなく、あくまでたまたまその場に立ち会っただけの状況です。
本職の指導員がいてその方のやり方というか方針もあるでしょうから、自分は余計なアドバイスなどはしない方が良いと思ってはいるのですが、生来のお節介な性格故に色々と手伝いはしていました。
キャンプ慣れしている子供はほとんどおらず、薪への着火でも四苦八苦している有様です。
そんなあるグループのうちの1つは火力が強過ぎるように見えました。
なかなか着火出来なかったので少し手伝ってあげたグループですが、やっと火がついたのが嬉しかったのかやや調子に乗り過ぎたようです。
竈門に近づくと少し焦げ臭い匂いもしています。
『おいおい これ米大丈夫か?』と聞くと
「えっ!? ヤバイですか?」
『うん たぶんお米が少し焦げ出しているね もう下ろして蒸らした方が良いよ』
子供達は素直に自分のアドバイスに従おうと思ったようですが、火勢が強くてなかなか手を出せずにいます。
写真で見てもわかるように鍋の持ち手が直火の炎で炙られているくらいですからね…
(写真よりも実際にはもっと火柱が上がっていました)
仕方ない、また少し手伝ってあげるか…
と、思いはしたものの、キャンプに来ていたわけではないので愛用の耐熱グローブや革手袋はもちろん軍手すらありません。
仕方ないので子供に言って、子供が持っていた軍手を借りことにしました。
さすがにこの状態では熱かろうと、左右両手分を借りて2重にして装着。
一番勇気のありそうな男の子を指名して、彼にも軍手を2重にするように言います。
男の子にはやや火勢が弱い方の持ち手を持たせて、自分が写真手前の火勢の強い方の持ち手を持ちます。
炎の中に手を突っ込み、さぁ二人で息を合わせて両手鍋を持ち上げます。
指に鍋の重みを感じた瞬間に熱が伝わってきました。
えっ!? ちょっとこれは熱すぎないか?
でも鍋は持ち上げて手前に移動中です。
ここで自分が手を離したら、片方の持ち手しか持っていない男の子が耐えられるわけがありません。
お米が入っている鍋は落下してお米は飛散!?
下手をすれば竈門を直撃してカレー鍋も落ちてしまい子供たちはカレーを食べられなくなってしまうし、炎と煙が舞い上がり大パニックになるのは容易に想像がつきます。
片方の持ち手を持っている男の子は火傷するかもしれません!!
これは何が何でも耐えきらないと!!!
瞬時にそう判断し、指先の熱さを我慢してなんとか鍋を地面に置きます。
この間わずか1秒も無いくらいでしょう。
鍋から手を離すと、思わず『熱っ!!』と声が漏れてしまいました。
軍手を嵌めている手を見ると、人差し指と中指の先が完全に溶けてポッカリ穴が空いています。
親指と薬指も1枚は溶けてかろうじて下の軍手が残っているだけです。
子供たちも自分の異変に気がついて
「オジサン大丈夫?」と覗き込んできます。
せっかくの楽しい飯盒炊爨を台無しにするわけにはいきませんから、何ともない風を装いながら
『ゴメン!ゴメン!! 借りた軍手に穴を開けちゃったよ』
子供たちも熱で軍手が溶けたことをすぐに理解して
「えぇ〜!! オジサン大丈夫!?」と心配そうです。
自分に軍手を貸してくれた女の子は既に泣きそうです。
『最近の軍手はポリエステルとか化学繊維とかが混ざった製品もあるから、そういう軍手だとこうやって熱いものを持つと溶けちゃうこともあるんだね』
『こういう飯盒炊爨で使う軍手は綿100%の軍手を選ぶようにしようね!」
努めて明るい声で子供達に説明します。
子供たちも真剣に聞き入っています。
自分と一緒に鍋を下ろした男の子にも『君は大丈夫だった?』と聞くと両手を広げて、
「オレの軍手は大丈夫!」と元気良く答えてくれます。
「オジサンの手は大丈夫?」
子供たちがもう一度聞いてくれます。
『オジサンはキャンプ大好きでこういうの慣れているから全然大丈夫だよ〜』
ようやく安心したようで、皆ホッとしたようです。
『他のグループのお手伝いに行くね』と言ってその場を離れトイレに行って、流水で指先を冷やします。
何とか軽い火傷で済んだようです。
指先はジンジンしてきましたが、普通に動かしたりできるので、医務室を探したりするほどではありません。
でもあと0.2秒遅かったらマジでヤバかったろうな〜と思います。
しばらくしたら先ほどの子供達がスゴスゴと「オジサン食べて」とカレーを持ってきてくれました。
一生懸命に焦げてないお米をかき集めてくれたようで一見上手に作れたように見えるカレーです。
焦げたお米は自分達で食べています。
あぁ〜優しい子供達だなぁ〜
こんな優しい子供達が火傷したりしなくて本当に良かったと思えます。
そして子供たちも火の危険性を感じることが出来てとても良い経験になったんじゃないでしょうか。
自分の指先には水脹れの豆が出来てしまいましたが、子供たちが安全に過ごせたらなら何よりです。
この記事を読んだ保護者の方は覚えておいて下さい。
一般的に売られている軍手の多くは溶けやすい化学繊維軍手(ポリエステルやナイロン)を多く含む混紡と言われる生地が使われています。
上の写真はダイソーで売られている3双組で110円のものですが、見てのとおり綿はわずか22%しか入っていません。
残りの約8割は高温で溶けやすい化繊です。
中には(伸び縮みする生地)化繊混紡どころか化学繊維100%素材の軍手もあります。
こういう軍手で熱い鍋を持つと今回のようなことになります!
出来る限り綿100%(純綿といった表示)の製品を選んで下さい。
綿100%ならば、(熱を完全に防ぐまではいきませんが)溶けたりはしないので直接肌に触れることは防げます。
また滑り止めのゴム製のイボイボがついた軍手を使う子供よく目にしますが、このイボイボも熱で溶けます。
その熱く溶けたゴムが染み込んできたらどうなるかは分かりますよね?
自分はそういう軍手を飯盒炊爨などで使うときは掌と甲を逆にして使うように、いつも指導しています。
でも、こんな事を考えなくて済むようゴムイボの軍手はあまりお薦めできないですよね。
と言うか、以前から思っていたのですが先生を含めて軍手を軽く考えすぎていると感じています。
本来は先生が保護者に純綿の軍手を持って来させるように注意喚起するべきだと思うんですよ。
あるいはいっそ、学校がまとめて購入して支給しても良いんじゃないかな?
軍手ってまとめ売りの販売形態が多いから、その方が安価に済むだろうし。
純綿軍手 12双
もっと火傷に警戒するなら、耐熱繊維のアラミドなどが混紡された厚手の軍手などの方が良いのですけどね。
トワロン K-165 アラミド手袋
可能ならば革手袋なら更に良い
TRUSCO 牛床革手袋
火傷の心配をするなら耐熱グローブが一番安全性は高いのはもちろんです。
耐熱グローブ
まぁ飯盒炊爨でここまでの装備はオーバースペックですが…
自分は革手袋も耐熱グローブも複数種類ずつ持っていますが、大仰しいというか着脱の面倒さもあり、実はあまり使っていないのが実態です。
柔らかさやフィット感に優れている上に使わない時はポケットにねじ込みやすいのでついつい純綿の軍手を選んでしまうんです。
なので、軍手のように気軽に使えるかと思って、アラミド繊維混紡の軍手を購入したのですが、ちょっとチクチク感を感じて結局使っていませんでした。
これを機会にアラミド繊維の軍手を改めて意図的に使うようにしようと思い直しました。

子供の安全を守るために軍手はきちんと選びましょう!