自転車キャンプを数回やってみて、これは欲しいと思ったものの1つが椅子だった。
自分の自転車キャンプのスタイルはバイクパッキングと呼ばれるもので、自転車に荷台などを取り付けず直接バッグを取り付けるスタイルです。
荷台ならば、その気になればゴム紐などで括り付ければ山のような荷物でも運ぼうと思えば運べる。
しかしバイクパッキングではバッグの形状以上の荷物は入れることが出来ない。
そして自分の取り付けているサドルバッグは全メーカー中最大容量なのです。
それでもソロ用テントとシュラフを入れたらそれだけでほとんど一杯一杯です。
(大きめの冬用シュラフならテントと一緒には入らない)
フレームバッグやトップチューブバッグは構造的にそれほど大きくはならない。
すなわちバイクパッキング的には自分の状態で既にほぼ限界です。
(フロントフォークにケージを取り付ける方法もあるが、とりあえずそれは置いておきます)
とにかくそんなわけでバイクパッキングでは荷物は最小限にとどめたい。
もちろん椅子なんて無くたって地べたに座り込めば良いのだから、絶対に必要な道具ではない。
自分が10代の頃にやっていた野宿ツーリングならばそんなスタイルでもかまわないが、今は自転車によるキャンプがしたいと思っている。
別にそんな遠くまで走らなくても構わない、いやむしろ時間や体力の問題で近場で済ませたい。
ただ自転車でキャンプ地に行って、キャンプしたいのです。
そしてキャンプならばゆったりと落ち着いて休みたいので、くつろげる椅子はどうしても欲しいと思ったわけです。
さて小型軽量なキャンプ用の椅子とくれば…
多分ほとんどの方が先ずはヘリノックスを思い浮かべるんじゃないでしょうか?
代表作はチェアワン
スタッフバッグ込みの総重量が960gはオートキャンパーの感覚だと十分に軽いが、登山や自転車での利用に考えると正直微妙なところ。
というか自分のパッキング的にはギリアウト!
ならばもっと軽い椅子を探して、例えばこんな折りたたみ椅子なら300g
三脚タイプの椅子で280g
とにかくヘリノックスのチェアワンよりも軽い椅子は探せば、色々と有るのです。
実はこのタイプの椅子は両方とも持っています。
でも実際に使ってみると、座り心地に優れているとは言い難い。
座面が小さくて落ち着かないし、何より背もたれが無いので自分はくつろげない。
元々上記の椅子は仕事中の作業用やスポーツ観戦目的で購入しているので、くつろぎは求めていなかったのです。
どちらも目的には合致した良い椅子ですが、キャンプではくつろぎを求めます。
くつろげないならば、いくら軽くとも持って行く意味が無い。
背もたれが装備されていて、ヘリノックスのチェアワンよりも軽量コンパクな椅子となるとこれがほとんど見つからない。
それだけ優秀だからこれだけ売れてロングセラーとして人気を維持しているわけです。
そんな非常に数少ない選択肢が、チェアワンと同じくヘリノックスのグラウンドチェアとチェアワンミニとチェアゼロとチェアゼロハイバックです。
グラウンドチェアは座面をぐっと下げたタイプ、チェアワンミニはチェアワンの縮小版、チェアゼロはチェアワンの軽量版、チェアゼロハイバックはチェアゼロのハイバックタイプと思っていただいて良いでしょう。
スペックで比べるとこんな感じ。
本体重量(バッグ込) | 収納サイズ | 幅x奥行きx高さ | 座面高 | |
チェアワン | 890g(960g) | 10x12x35cm | 52x50x66cm | 35cm |
グラウンドチェア | 615g(640g) | 11x11x30cm | 52x50x49cm | 22cm |
チェアワンミニ | 450g(500g) | 8x10x26cm | 40x34x44cm | 23cm |
チェアゼロ | 490g(510g) | 10x10x35cm | 52x48x64cm | 28cm |
チェアゼロハイバック | 655g(680g) | 12x12x40cm | 49x47x83cm | 28cm |
先ず自分が選択肢から最初に除外したのがチェアワンミニ。
ヘリノックス(Helinox) チェアワン ミニ ブラック ブラック (BK) 1822227 ブラック (BK)
重量はこの中で一番軽くて良いのですが、幅x奥行きを見ればわかるように座面が極端に小さい。
モンベルの説明にも書かれていますが、これ基本的には子供用なんです。
耐過重は90kgあるので大人も使えるのですが、椅子の大きさ的に小柄な体格の方向けですね。
くつろぎたいからこうした椅子を検討しているのに、座って窮屈じゃ意味が無いと思うのです。
小柄な女性などが選ぶなら一番良いと思うんですけどね。
次に除外したのがチェアゼロハイバック。
ヘリノックス Helinox チェアゼロ ハイバック ブラック 1822279 BK
背もたれが長いので、この中で一番くつろげるのは間違いありません。
チェアワンを除けば一番重いけれど、グラウンドチェアと比べれば極端に重いとは言い切れません。
自転車と言っても競技では無いのですから100g重いからと言って極端に疲労度が変わると自分は思っていません。
もちろん軽ければ軽い方が良いのですが、100gを極度に気にするなら先ず自分が100g減量すれば良いと思っちゃうんですよ。
言ってもチェアワンよりは確実に軽いわけで、けっこう軽量な椅子なわけです。
なのにくつろぐための椅子としてはかなり能力が高い。
このように考えてみるとチェアゼロハイバックは自分の用途には非常に適していると思われる。
しかし致命的な問題があります。
収納サイズはバッグが伸びるわけではないので、とにかく小さくないと持っていけなくなる可能性が高い。
チェアワンが大きくて収納が難しいから更に小型軽量な椅子を検討しているのに、そのチェアワンよりも大きな収納寸法なのだからどう考えても無理です。
どんなに優れた製品でも持って行けなければ、意味がありません。
自転車にキャリアを取り付けて積載量に余裕があるなら一番良いと思うんですけどね。
となれば残ったグラウンドチェアかチェアゼロのどちらかを選ぶしかありません。
Helinox(ヘリノックス) アウトドア グラウンドチェア 1822229 グレー (CLBT)
重量はグラウンドチェアの方が100g以上重いけれど、先述したように100gくらいなら自分は気にしません。
そして収納寸法はグラウンドチェアの方が少し太いけれど短い。
向かって左がグラウンドチェアですが、見た感じだとチェアゼロの方が少し大きいような印象を自分は受けます。
でも軽いのはチェアゼロ…
うぅ〜ん、これではどちらが小型軽量とは言い切れません。
となれば、実際に座り比べてどちらが好きかで決めるのが良いでしょう。
実際に座ってみて自分が先ず感じたのは、グラウンドチェアの座面の低さ。
名前のとおりグラウンド=地面に座っているかのような低さです。
スペック的に、チェアゼロはチェアワンと比べると7cm低いのですが、それほど低くなった印象はありません。
「ローチェアってこんなもんだよね」って感じです。
そしてグラウンドチェアはチェアゼロよりも6cm低いわけですが、極端に低くなった印象を受けました。
「ほとんど地面に座り込んでいる」ような感覚です。
次にグラウンドチェアは剛性感は悪く無いのですが、地面との接地感がグラグラして落ち着きません。
ロッキングチェア的な雰囲気と思えば悪くは無いのですが、ちょっと大きく傾けるとそのままコロンといきそうで自分には落ち着かないように感じるのです。
特に椅子から立ち上がる時に手をつこうとすると倒れそうになるので、これは腰痛持ちの自分にはキツいです。
実際に座ると自分的にグラウンドチェアは無いですね。
もちろんこうした座り心地は個人の感覚により極端に変わりますから、万人にとってグラウンドチェアが不向きなわけではありませんが、チェアワンの座り心地からヘリノックスを選ぼうと考えている人には不向きだと思います。
逆にチェアゼロはチェアワン的な感覚で座り心地が良い。
チェアゼロは(何ならチェアワンも)剛性感に乏しく体重をかけるとギシギシとたわむのですが、そこもロッキングチェア的なフワフワ感で自分はむしろ落ち着くんです。
身体を包み込むようなフィット感と相まって、目的だった「ゆったりくつろぐ」という表現がまさにピッタリです。
グラウンドチェアではグラグラして落ち着かないと言ったのに矛盾していると自分でも思いますが、そう感じてしまうのだから仕方無いです。
微妙な違いですが、明確に違いはあって、その違いは個人の感覚としか言いようがありません。
こうして検証してみるとチェアゼロの優秀さが際立ちますね。
重量はチェアミニと共に最軽量クラス、座り心地はチェアワンと遜色無いくらいにくつろげる。
欠点は無いのかと言えば、もちろんあります。
大幅な軽量化を図るために極限まで薄く軽くした素材を採用しています。
チェアワンなどと比べても剛性感に乏しいですし、背もたれに強く体重をかけたりすればけっこうギシギシします。
なので耐久性は低いでしょうし、坐布もギリギリまで薄くしているから焚き火で火の粉などが飛んで来れば一発で穴が空きます。
それと高額なのも欠点と言えば欠点でしょう。
チェアワンはAmazonなどを見ればものすごい量のコピー商品が溢れています。
パチモンのヘリノックスということで「パチノックス」あるいは偽物ということで「ニセノックス」と呼ばれたりもします。
ところがチェアゼロの約500gとまでは言わなくても7〜800gくらいの少し軽くなったパチノックスすら見かけません。
軽量化するにはコストが高くつくので、安いことが存在意義のパチノックスでは現状以上の軽量化は全く考えないのでしょうね。
それでなくとも耐久性や剛性が低いと言われるパチノックスではこれ以上の軽量化は破損のリスクが増大するだけですしね。
それとチェアゼロは元々の定価が高額と言うだけでなく、あまり安売りセール対象にもなりにくいです。
自分はWild-1の年末年始のセールで20%オフ、そこから初売りは更に1割引だったので約3割引で購入しましたが、ここらが限界だと思います。
でもそうしたセールを待っていると、近頃の物価上昇の流れを考えると定価の値上げがあるかもしれないので、微妙です。
Amazonでは8%引きで販売しているのを見ましたが、そのくらいが相場だと思います。→Amazon(2024.04.01.現在)
とにかくまぁ高額な商品ではありますが、個人的には購入して本当に良かったと思っています。
使って良かった点は…
やはりとにかく軽量コンパクト!
自分の場合はディパックの脇のウォーターボトルを刺すところに入れて運んでいます。
約500gですから、ちょうどペットボトル1本分なので、ディパック製造メーカー想定通りの使い方というわけでバッグにも負担が少ない。
その軽さのおかげで、チェアワンでもよく言われていますが、風で飛びやすい。
ペグと細引で固定して使った方が良いと思います。
ちなみに収納袋に入れた状態で実測521.0gです。
公称値より10g重いけど、許容範囲でしょう。
付属品に至るまで徹底的な軽量化が施されているのは凄いの一語です。
例えばフレームをまとめるためにはベルクロのバンドなどではなく、ゴム紐です。
これはコスト削減ではなく1g単位の軽量化狙いだと思います。
その証拠と言ってはなんですが、これただのゴム紐ではなくシリコン製のゴム紐です。
ちゃんと考えた上での軽量化だという心算が感じられます。
組み立てはこの手の椅子としてはごく普通。
特別難しくも簡単でもない。
座り心地は先述しているように、本当に素晴らしい。
もちろん重量やサイズを気にしなくて良いなら、これ以上の座り心地の椅子はごまんとありますがこれほど小型軽量なのにこのくつろぎ感は唯一無二です。
ちなみに最初の方で紹介した3本脚タイプや軽量アルミの4本脚タイプの椅子と比べると
これだけしっかりした椅子のフォルム。
そりゃぁくつろげますよ!
それが収納すると
コンパクトさではヒケを取らない!?
いや〜本当に凄いと思いません?
焚き火で穴が開きやすい点は本当に気をつけた方が良いです。
チェアワンで採用されている少し厚めのポリエステルでも火の粉で穴が開くものですが、極薄のナイロンは更に酷いです。
むしろ「目立たない小さな火の粉って思っている以上に飛んでいるものなんだな」と気がつかされるレベルで穴が開きます。
タオル等をかけるのも手かもしれません。
(自分は面倒なので気にしていませんが…)
チェアワン登場以後で考えれば、特段変わったところの無いスタンダードな椅子なのにオンリーワンの軽さ。
そう考えるとパチノックスではなく、あえて高額なヘリノックスのチェアワンを買うならばオートキャンパーでもチェアゼロを選んでも良いのではないだろうか?
最近ではそんなふうに考えています。
優れた座り心地と超軽量の両立を成し遂げている椅子。
それがチェアゼロです!
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