ここしばらくローチェア関連の話題を続けていたので、昔の思い出話をさせてください。
30年以上前はローチェアなんて分け方はしていなくて、携帯性を重視して結果的に座面が低くなってしまった折り畳み椅子というジャンルが有っただけでした。
それが明確にローチェアというジャンルを築いたのは、2009年にチェアワンを生み出したヘリノックスやほぼ同時期にマンティスを発表したA-Lite、この2社なのは間違いありません。
ですが今日の話題はこの2社の製品ではありません。
アメリカでアウトドアチェアを製造販売しているGCI Outdoorの製品、その名も「Trail-Sling Ultralight トレイルスリングウルトラライト」です!
調べると、先のチェアワンやマンティスに先駆ける2005年に発売されたようです。
正直自分ももうあまりよく覚えていないのですが、「ゆったり座れるのに画期的に軽い椅子がアメリカで発売された」という感じで一部のバイクツーリング好事家の間で当時話題になったのです。
1994年にオーストラリアをキャンプツーリングして回った自分でしたが、この頃は妻と結婚してもう長期間のキャンプツーリングは諦めかけていた頃でした。
なのでハードなツーリングから方向性を変えてノンビリマッタリとしたバイクツーリングを模索していた頃です。
あの頃の日本ではオートバイツーリングで持って行く椅子なんて記事冒頭に挙げた100均で買える折り畳み椅子や、同じく100均で買える3本脚の椅子が一般的でした。
自分はといえば、それすら持たない地ベタリアン(苦笑
なので、そんな便利な椅子があるなら買ってみるかとアメリカのアウトドア生協=REIから個人輸入してみたのです。
REIは時々強烈な激安セールをやるので、それでかなり安くなっていたから衝動買いだった記憶。
いくらくらいだったかなぁ〜?
もうよく覚えていないけど、たぶん30ドルくらいだったかな?
100ドルとかそんなに高額だったら当時の自分は絶対に買うわけないし、50ドルでも躊躇いそう、たぶん30ドルくらいなら衝動買いしたんじゃないかな?
重量は収納ケースに入れて実測1026.5g
自分が使っていたガダバウトチェアが1.6kgで軽量と言われていた時代ですから、約1kgで本当に座り心地が良ければ確かに革新的です。
アメリカから届いたトレイルスリングは確かにコンパクトだった。
現代の超軽量チェア=ヘリノックスのチェアゼロと並べても大きく見劣りはしません。
収納袋から出すと、坐布とメインフレームとサブフレームの3点に分かれた構成。
坐布の裏に組み立て図があるので、それを見れば誰でも出来る。
メインフレームを伸ばしたりするギミックはけっこう凝っていて、変形ロボ好きな男の子にはたまらない。
組み上がるとこの形。
坐布上下端にフレームを通して、坐布を吊るしているような構造。
ハンモックを短くして斜めに立てたような感じ。
だとすると包み込むような座り心地なのかな?
これは期待できそうです。
さて座ってみると…
あれ?
お尻がフレームに当たります…
とてもじゃないが上質な座り心地とは言えません。
俺の体重が重いのか?
いやいや、俺なんかよりはるかに大柄なヤンキー向けに作られた椅子でそれは無いでしょ〜
そう思って、上体を背もたれに預けてみると…
おっ! お尻が浮いた!!
それに確かに座り心地が良いっ!!!
そう、この椅子は背もたれに身体を預けてリラックスした状態でのみ、上質な座り心地になる椅子だったんです。
食事などでは全く使い物にならず、仰向けにのけぞってリラックスした時のみ使える椅子。
って、それ椅子かぁ?
うぅ〜んでもコットじゃ無いし、ハンモックでも無いし…
とまぁ、かなり癖の強い道具だったわけです。
アメリカ本国でも話題になったのは最初だけ、売れ行きも芳しくなく…
数年後にチェアワンやマンティスが売り出されると、メーカーからも見放されて改良も何もされる事無く忘れ去られて廃盤になったのでした…
もしかしたら、こんな使いにくい道具だと説明されていたのかもしれませんが、当時の紙カタログからは事前に読み取れなかったのです。
こんな癖の強い道具、いくら軽量コンパクトとは言え車載量に限りのあるオートバイで毎回持ち出す気にはなれません。
かと言ってこの当時は、オーストラリアキャンツー仕込みのキャンプスタイルが妻には絶賛大不評で、普通のキャンプは無期限休業中でして…
要するに使い道が全く無くなってしまった。
引越し段ボールに仕舞い込んだまま使わないでいると、自分もこの道具の存在を完全に忘れ去っていました。
時は過ぎ去り2024年の冬にヘリノックスのチェアゼロを購入するときに、フと思い出したので探してみたら見つけられた。
せっかくだから紹介しておこうと思った次第です。
軽量ローチェアの歴史から完全に忘れ去られた道具ですが、そんな残念な失敗があるから今の道具の発展もあるのかもしれません…