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最高峰シュラフ モンベル ドライシームレスダウンハガー900#1

4月も半ばを過ぎ、桜も散って暖かい日が続くようになってきました。
自分はこの冬も自転車キャンプに行くつもりでいくつかの新しい道具を夏頃から入手していたんですけどね…
色々と諸事情が重なってしまいこの冬は自転車キャンプに行く機会がありませんでした。
もうそこまで寒くは無いけれど、せっかく購入した冬装備をなんとか使う機会を無理矢理作ったので、これからしばらく紹介していこうと思います。

今回は冬用の寝袋。
それも冬季自転車キャンプ用の寝袋です。
実はそうした目的のための寝袋を昨シーズン既に購入しています。
SEA TO SUMMITのエンバーEbIII
このシュラフはキルトと呼ばれる背中側が無いという特殊な形状のシュラフです。
背中側の保温はエアマットに依存するという発想で、その分の軽量化とコストダウンが図られているというのが一般的な評判です。
でも実際に自分で購入して使用してみると、決してそれほどの軽量化には繋がっておらず、どちらかというとシュラフ内部がユッタリ広く使える事がメリットだと感じた。
一方でゆったり使えるという事は、隙間から冷気が入りやすくなる事と同義でもある。
特に自分は寝返りを多く打つなど、寝相が悪いという自覚がある。
昨シーズン使ってみて、寝心地は気に入ったが厳寒季に使うにはやや心許ないというのが素直な本音。

元々、このエンバーEbIIIを購入する際に比較検討していた時の最有力候補はモンベルのドライシームレスダウンハガー 900 #1でした。
モンベルは国内アウトドアブランドとして、このブログを見るような人なら誰でも知っているであろう超有名ブランド。
総合アウトドアメーカーとして登山用品から衣類までほとんどのアウトドアジャンルを網羅していると言っても過言でないくらい幅広いラインナップ。
その中でも寝袋は特に評価の高いジャンルで、ナンガ・イスカと言った寝袋専業メーカーと共に国内3大メーカーに数え上げられるほど評価が高い。
自分は30年以上前からモンベルのダウンハガー#2を愛用しているが、多少ロフトが潰れたとはいえ今でも3シーズン用として実用できるほど耐久性が高く非常に信頼できるブランドだと確信している。
そんなモンベルの中でも一番のハイエンドモデルがこのドライシームレダウンハガー900なのです。
何をもってハイエンドモデルとするかの解釈は色々とあるが、やはり高性能・高品質・高機能でなければならないでしょう。
ダウンの性能はダウンの膨らみを数値化したもので表し、単位はFPで数値が大きい方がダウンも大きく膨らみ暖かくなります。
一般的に500FP以下が低ダウンとされ、600〜700FPは良質ダウン、700FP以上は高品質ダウンとされています。
それがこのダウンハガー#900シリーズは900FPの超高性能ダウンを採用しているのです。
最近はモンベルのダウンベストなどでは1000FPの超超高性能ダウンを採用したモデルもありますが、体重が強くかかり大量のダウンを封入するシュラフに関しては、国内は元もより海外でも1000FPのダウンを採用したダウンシュラフはほとんどありません。
すなわち900FPのダウンシュラフという時点で既にこれは世界最高峰のシュラフなんだという事がわかるのです。

そしてそんな900FPのダウンを、どれだけの量を封入するかで対応温度がある程度決まってきます。
モンベルは残念なことにダウンの封入量を公開していないので、重量はわからないのですがモンベル独自の番手(#0〜5)で大まかにクラス分けしています。
*引用モンベル

今回自分が購入したのはドライシームレスダウンハガー900シリーズでは一番低気温に対応した#1
冬季に対応と言ってもそれでは漠然とし過ぎなので、まともなシュラフメーカーは漠然とした「夏・スリーシーズン・冬用」などと表記せずに、具体的な気温を指標として記載します。
「快適温度10℃・限界温度5℃」というような感じです。
でもこうした温度記載もメーカー毎に基準がバラバラで、ペラペラでダウンは少ないのに0℃対応とかかなり怪しい基準のメーカーもありました。
そこで現在はヨーロッパを中心に策定された国際規格=EN(ヨーロピアンノーム)という指標が広まってきていて、異なるメーカー間でも同じ指標として比べる事ができるようになってきました。
例えば「ENコンフォート0℃」と表記されていれば、気温0℃くらいまでは快適に使えるという事です。
ただ自分の経験上、こうした寝袋の使用者は相応の筋肉量を有した登山者を想定しているようで、普段特に運動もせず特別寒さにも強くない一般人だと3〜5℃くらいは控えめに考えた方が良いと思います。

さて、今回自分が購入したドライシームレスダウンハガー900#1は、ENコンフォート−3℃と厳寒期と考えるとそれほど凄い極寒対応とは言い難い。
ハイエンドというには物足りないと思う人もいるでしょう。
しかし、このシュラフのメインターゲットは主に国内の2000m級の残雪期登山でしょう。
もちろん冬季の2000m級ならば-3℃よりももっと寒くなる事が考えられます。
でも残雪期に2000m級に登る人達はそれ相応の経験を積んだ人ばかりです。
寒さに対しても慣れていますし、対策もしっかり取れる人達です。
まさか防寒着は何も持って行かないなんて事は無いでしょうから、寒けりゃそうした防寒着を着込めば良いわけです。
ならば過剰に暖かさを追求するよりも、軽量コンパクトな方が需要は高まるわけです。
車で厳寒地に行くオートキャンパーならば、もう少し大きくなっても支障はありませんしその方が安価にも済むわけです。
そんなわけで、そういう方向けにはシームレスダウンハガー800シリーズでしたら上位の#0や更に暖かいEXPというグレードがあり、ENコンフォート−12℃に対応しています。
自力で挑むために軽量コンパクトを求める人達にとってのハイエンドモデルが900#1というわけです。
まぁ本音を言えば、900#0という設定があっても良かったとは思うんですけどね…

そしてハイエンドならではの高機能という観点からは側生地に違いがあります。
ドライというネーミングから分かるように、防水性を備えた生地が採用されています。
しっかりしたテントを使用していれば雨漏りというのは心配する必要はありませんが、結露による水濡れはけっこう起こる事なのです。
特に軽量化に拘ってシングルウォールテントを選んだ場合などは顕著です。
一般的にはシュラフにシュラフカバーをかけて対策をとるのですが、このドライシームレスダウンハガーは側生地にゴアテックスを採用する事により、シュラフカバーが不要になるわけです。
ドライシームレスダウンハガー900#1は総重量は864gと、高FP採用で対応温度は控えめな割には少し重めなのですが、シュラフカバー分(約360g)軽量コンパクト化するので、結果的にはむしろ軽量コンパクトと言えるわけです。
そしてそんな防水性の高い素材としてゴアテックスが採用されているのがハイエンドモデルならではです。
外からの雨などは遮断し内側からの寝汗は発散する、そんな防水透湿生地としてゴアテックスは正にパイオニアであり、先駆者として重要技術を特許取得していていまだに世界最高峰の生地です。
ゴアテックス同様の防水透湿生地は数多くありますが、防水透湿の性能はゴアテックスが頭1つ抜けている感があります、なのに耐用年数が一番長いのもゴアテックスだというのが自分が色々と試しての実感です。

ネーミングに表している機能でいうと「シームレス」に関しても説明しておきましょう。
通常シュラフはダウン・綿が偏らないように隔壁を作るように区分けして縫ってあるのが普通です。
偏ってダウンの入ってない場所が出来ると、その箇所だけ保温性能が著しく低下します。
そういう箇所を「コールドスポット」と呼んで、各メーカーはコールドスポットが起きないように工夫しているのです。
隔壁をたくさん作って区分けを細かくすればコールドスポットの発生確率は減りますが、あまり細くし過ぎるとダウンの膨らみの邪魔になるし、隔壁は要するに縫い目ですからそこから冷気も侵入する。
区分けが大きいと各区分けの中でコールドスポットが発生しやすくなるので大きすぎる区分けも芳しくない
このバランスに各メーカーは腐心していたのです。
それがこのシームレスダウンハガーは隔壁を作らない即ち区分けはせずに、内部に糸を巡らせてその糸にダウンが絡みつくような構造にしてダウンの偏りを防いだのです。
これにより縫い目から冷気の侵入を激減させダウンの膨らみも阻害しない、ついでに言えば軽量化も図れるというわけです。
一見良い事づくめのようですが、このシームレス構造もまだ完璧なわけではありません。
糸に絡ませてダウンの偏りを防ぐはずですが、全てのダウンが必ず絡み付いているわけでは無いのです。
なので絡み付いていないダウンは偏る可能性がある。
シームレスダウンハガーが発売され店頭に見本が並ぶと皆が驚いたのは、店頭に吊るしてあるシームレスダウンハガーが下方に偏っていたのです。
こうやって吊るしてある寝袋の下方を見ると…

見事に下にダウンが偏っているのがわかりますね!?

こうした状態を見て、アンチモンベルの人達がweb上でこの状態を拡散しまくったので、一時期は旧モデルにプレミアムが付いたほどです。
確かにこのように吊るしておくと偏りますが、収納ネットなどで保管しておく分にはここまで偏りません。
そしてもし偏っても、逆さにしてバサバサ振ったり掌で空気ごと押し込むように撫でていけば偏りは解消できます。
それに側生地に縫い目が無いって事は防水性の面からは圧倒的メリットで、ドライシリーズに関して言えば非常に重要な組み合わせと言えるでしょう。
現在も偏りを嫌って、シームレスダウンハガーを批判する人達は一定数いますが、メリットとデメリットを考えれば許容範囲内のデメリットかと自分は考えています。

また品質の面からも考察してみましょう。
ダウンには種類としてグースダウンとダックダウンがあります。
グースがガチョウ、ダックがアヒルです。
ガチョウの方が体が大きいので、取れるダウンも大きい=保温性が高いのです。
またガチョウは草食なのに対しアヒルは雑食なので、アヒルの方が獣臭がキツいです。
そして更にガチョウの方が耐久性が高く長く使えるのです。
一般的にアヒルのダウンは3〜5年の寿命に対し、ガチョウは10年と言われています。
自分の場合は実際に30年以上使っているわけですが…
現在モンベルはダウンの種類を公表していませんが、800FP以上のモデルにはグースダウン(モンベルではEXダウンと表記しています)を使用しているようです。
もちろんドライシームレスダウンハガー900#1は900FPのEXダウン=グースダウンを使用しています。
ゴアテックスが他の防水透湿生地よりも耐用年数が長いという事を先述しましたが、グースダウン採用と併せて、このシュラフは長く高性能を維持出来るわけです。

これほどの高性能・高機能・高品質のシュラフなのに、モンベルらしくナンガなどと比べて比較的安価で、お小遣いの少ない自分でも無理をすればなんとか手が出る価格。

現在は約1万円ほど値上げしてしまいましたが、他のメーカーだとハイエンドモデルは10万円超えも珍しく無いので、やはりコスパに秀でているのは間違いありません。

とにかくスペック的に最高なのは間違い無い。
とは言えシュラフと言うのは、数値上のスペックと実際の使用感が必ずしも一致しない事が多い道具です。

実際に使ってみた感想を述べていってみよう。
先ず重量をチェック
スタッフサックに入れて868.5g

スタッフサックは実測28.1gだったので、シュラフ本体は840.4g
公称値は847gですから、かなり正確な値を公表していますね。

収納時のサイズ感。

500ccのペットボトルを置いたので、なんとなく感覚が掴めるでしょうか?
真冬用のシュラフがこの大きさと言うのは凄い事だが、ビックリする程かと言えば微妙なところでしょう。
それはやはり防水性に優れるけど、ナイロンほどは極薄にならないゴアテックスのせいだと思います。
それに他にシュラフカバーを持たなくて済むと考えれば、十分過ぎるくらいにコンパクトと言えるでしょう。
そしてコンプレッションバッグに入れれば、もっと圧縮することも出来ます。
でもそうすると重量増に繋がるし、ザックの中でギュウギュウと押し込めばそれで済むという考え方もある。
重量増・コスト増を嫌って、モンベルは必要以上のコンパクトさにしなかったのでしょう。

ではスタッフサックから出してみましょう。

ここから時間と共にダウンが膨らんでいくと…

さすが900FP!シームレス!!
もの凄い膨らみ方です。

噛み込み防止のジッパーを開けてみると

うぅ〜ん、軽量化のため短いジッパーを採用しているので、大きく開かずシュラフ内への出入りはスムーズとは言い難い。

暑かった場合は温度調整もしにくいです。
でもまぁもの凄いダウンの膨らみ方なのが、この写真からも分かりますね。
ENコンフォート−3℃なので、期待していなかったのですが思った以上に暖かい。
この時は最低気温7.8℃だった事もあり、ちょっと暑過ぎました。

登山をするわけでもない自分には、今シーズンはもう氷点下でテストする機会は無さそうです。
来シーズンまた実際に使ったら、保温性に関しては追記しようと思います。

寝心地に関しては、モンベルにしては窮屈ですね。
昔から、モンベルは「シュラフ内で胡座がかける」と言われるほどシュラフがよく伸びるので快適性が高いと定評がありました。
しかしこのモデルは側生地にゴアテックスを採用しているせいか正直あまり伸びない。
そして収納をコンパクトにするために、シュラフは全体に窮屈な使用感です。
シュラフと言うのは温めた空気を逃さないためにも隙間は少ない方が保温性を高く出来るのです。
そうした窮屈さを、伸びる作りでカバーしてきたモンベルですが、このシュラフに関してはそこまでカバーできていないと言うのが正直な感想。

それと、あれほど膨らんだのは良いのですが撤収時スタッフサックに収納しようとシュラフを潰そうとしても、中々空気が抜けません!?
これもゴアテックスの弊害です。

更についでに言うなら、メンテナンスもちょっと面倒そうです。
ダウンシュラフは自身で洗濯する事も出来ますが、防水性に優れたゴアテックスのおかげで水に漬けるのに苦労しそうですし、苦労して洗って乾燥したら盛大にダウンが偏っていそうですよね…

軽量コンパクトなのに、とんでもなく性能が高いシュラフではありますが、色々と癖が強いモデルでもあると言うのが実際に使った感想です。
ただそれらの癖を飲み込める程の、軽量コンパクトさとコスパを実現しているのがドライシームレスダウンハガー900というモデルです。

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